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「ばかばかばか!!ソニックのバカー!!」
大きなエミーの声が街中に響く。大きなショッピングモール。高く聳える、人気のデートスポットのタワー。ソニックの居そうな所を探し回ったが、今日だけ何故かソニックの居場所のわかるセンサーが働かない。もう日が暮れる。

トボトボと歩くエミーの手には、手作りのピンクのハートのチョコレート。このまま渡せなかったらどうしよう。昨夜一生懸命作ったのに。今日じゃなきゃダメなの。明日じゃダメな、特別な今日が、無情にも暮れて行く。もう一回…探そうか…。それとも諦めて帰らなきゃダメかな…。
「ソニック…どこに居るんだろう…」

気温は下がる一方で、スカートで居るエミーの素足をしんしんと冷気が刺す。
どこか暖かい所で、沢山の女の子にチョコレートを貰っているのかな。もしかして、何処かの誰かとデートしているのかな。
悪い考えは後から後から湧き出る泉のようで、その考えと一緒に涙が滲んで湧いてくる。
「ソニックのばか…」

「バカはちょっとひどいんじゃないか?」
聞き慣れた、今日一番聞きたかった声が、エミーの背中からかけられた。慌てて振り向けば、目に入る鮮やかな空の色。
「ソニック…!」
途端、しぼんだ花のようだったエミーの表情がパッと蘇る。
「なんだか呼ばれた気がしたから来てみれば、バカ呼ばわりとはねぇ。」
「ソニックがあっちこっち行っちゃうの悪いんでしょ!今日は何の日かわかってるくせに!はい!あげる!」
返事を待たずにソニックの胸元に、エミーはチョコレートを押し付けた。
「what's?今日?今日なんだっけ?」
押し付けられたピンクのハートのチョコレートを見ながら、ソニックは耳の後ろを掻く仕草をする。
「俺はチリドッグの方が好きなのに、チョコレート??」
「一生懸命作ったんだからね!!ソニックのバカ!大好きなんだから!!」
思い切り抱きつこうとするエミーを、ソニックはひらりとかわして、手近な街灯のてっぺんへと飛び上がった。
その時、街中に並ぶバレンタインの文字と赤いハートのデザインの看板がソニックの目に飛び込んでくる。自分はさして気にもしていなかった、でも女の子にはとても勇気の居る日。ああ、とソニックは呟いた。
「こんなもの、無くったって…」
エミーはいつも、俺の事好きって言ってるじゃないか。
と言いかけて飲み込んだ。
代わりに、ピンクのハートへキスをする仕草をする。
「Thanks エミー!Happy valentine!」
ヒュッという風きり音を残して、ソニックは走り出す。遠くからエミーに呼ばれているような気がしたが、応えない事にした。

走りながら、ピンクの包みを開いて、チョコレートを取り出した。
飾り気はない、だがはっきりとカカオの香る、上質なチョコレート。色々な物で飾り立てて綺麗に見せるだけじゃない、とても真っ直ぐでストレートなチョコレート。とてもエミーらしいじゃないか。
ホワイトデーのお返しは、あの高原に咲く花でも見せてやろうかと、思いながらソニックは、チョコレートを囓る。
パキン!と小気味いい音が響いた。



2013 2/14 popoco




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